こんにちは。
岐阜県羽島市の三愛の山村です。
今回は、大切な機械式時計を長く愛用するために、
その寿命を延ばす正しい使い方とメンテナンス方法についてご紹介します。
意外と知られていない時計の扱い方ですが、少しの心がけで時計の寿命は大きく変わります。
ぜひ最後までご覧いただき、あなたの愛用する時計を次の世代にも受け継げるように、
適切なケアを実践してください。
1. 手巻き時計の正しい巻き方
機械式時計の動力源となる「ぜんまい」は金属製の渦巻きバネで、これを巻くことでその反発力を利用して針を動かします。
このぜんまいの巻き方が、時計の寿命に大きく影響します。
• 毎日同じ時間に「全巻き」する
技術者やメーカーは、手巻き時計の場合、1日に1回、決まった時間にぜんまいを巻くことを推奨しています。
ぜんまいが完全に解けた状態から頻繁に巻いたり、不規則に巻いたりすると、金属疲労を起こしやすくなります。
これは、クリップを何度も曲げ伸ばしするといずれ折れてしまうのと同じ現象です。
毎日決まった時間に巻くことで、ぜんまいが完全に解けきる前に巻き足すことができ、金属疲労を減らし、寿命を延ばすことに繋がります。
理想は「全巻き」、つまりぜんまいがこれ以上巻けないという状態まで巻くことです。
ぜんまいが壊れることを恐れて途中でやめてしまう人もいますが、時計のパワーを最大限に引き出すためにも、最後まで巻いてください。
手巻き時計の場合、リューズを約40回から50数回程度巻き上げると、全巻きの状態になります。
• 「ゆっくり」と巻く
ぜんまいを巻く際は、リューズを指でつまんだまま回し、指を離さずにゆっくりと元の位置に戻すようにしてください。
リューズを巻いた後に指を離すと、「小風」という部品が「パチッ」と音を立ててぜんまいが緩むのをロックしますが、
この音は部品の摩耗を進める原因となります。摩耗や破損を少しでも遅らせるために、音を立てずにゆっくりと戻すことを心がけましょう。
• 不適切な巻き方が引き起こすトラブル
ぜんまいの不規則な巻き方は、ぜんまい切れの原因となるだけでなく、時計の精度低下にも繋がります。
常に「全巻き」に近い、パワーが満タンの状態を維持することが、精度の安定にも繋がります。
また、ぜんまい切れはかなりの衝撃を伴い、その衝撃で歯車の歯先が欠けたり、軸が折れたり、
ルビーにヒビが入るなどの周辺パーツの破損に繋がる可能性もあります。
2. 自動巻き時計の正しい使い方
自動巻き時計は、腕に装着した際の動きによって内部のローター(回転錘)が回転し、ぜんまいを自動的に巻き上げる仕組みです。
そのため、手でぜんまいを巻く必要はありませんが、いくつか注意点があります。
• 適度な着用と活動量を心がける
自動巻き時計は腕の動きでぜんまいを巻くため、長時間家に置きっぱなしにすると止まってしまいます。
定期的に着用し、適度な運動量があることが時計にとって非常に大切です。
着用して歩いたり、仕事をしたりすることで、ぜんまいが常に全巻きに近い状態を維持できます。
• 止まった時計を動かす際の「手巻き」は最小限に
止まった自動巻き時計を使い始める際は、リューズを解除して巻き上げ可能な状態にし、ぜんまいを巻く必要があります。
しかし、自動巻き時計の手巻きは最小限に留めることをお勧めします。
手巻き時計とは異なり、自動巻き時計には「切り替え車」と呼ばれる精密なパーツがあり、これを酷使すると部品の寿命を縮める恐れがあるためです。
切り替え車は、リューズを巻いた際に内部で何度も摩擦を起こして稼働するため、摩耗が進むと高額な部品交換費用がかかることがあります。
目安として、10回程度リューズを巻いて、秒針が動き出すのを確認したら、あとは腕に装着して残量を増やすようにしましょう。
効率的にローターを回してぜんまいを巻くには、時計を手で持ち、スナップを効かせて振り、その後手のひらの柔らかい部分に叩きつけるようにすると良いでしょう。
• ワインディングマシンの利用と注意点
毎日時計をつけない方には、ワインディングマシンの利用も検討できます。
手で自動巻き時計を巻くよりも、時計に優しいという意見もあります。
ただし、ワインディングマシンにも注意が必要です。
長期間(1〜2ヶ月など)使用しない期間がある場合は、ずっとマシンにかけるのではなく、止まったまま保管しておくのも一つの方法です。
マシンにかけ続けると、その分歯車の摩耗や油の劣化が進む可能性があるためです。
ご自身の時計のローター(回転錘)の巻き上げ方向(両方向回転方式か、片方向巻き上げ方式か)を把握しておく必要があります。
これを間違えると、いくらマシンにかけてもぜんまいが巻かれない現象が発生することがあります。
3. 定期的なメンテナンス(オーバーホール)の重要性
機械式時計を長く使い続ける上で、最も重要と言えるのが定期的なオーバーホールです。
• 3年から5年に一度はオーバーホールを依頼する
オーバーホールとは、時計を分解・掃除し、消耗したパーツの交換やオイルの注入を行う作業です。
これを怠ると、故障した際に高額な修理代を支払うことになる可能性があります。
定期的なオーバーホールを行うことで、時計の性能を維持し、長持ちさせることができます。
まとめ
機械式時計は、適切なケアをすることで10年、20年と長く愛用できる素晴らしい道具です。
• 手巻き時計は毎日同じ時間に「全巻き」し、リューズはゆっくりと戻す。
• 自動巻き時計は日常的に着用し、止まった際は手巻きを最小限に。
• 3〜5年に一度のオーバーホールを忘れずに。
これらのポイントを心がけて、あなたの時計を大切にしてくださいね。