三愛では、メガネ、補聴器、時計、宝飾を扱っております。 眼鏡作製技能士および認定補聴器技能者がお客様の快適生活をサポートします。

Blog

2025.12.02 | メガネ

【老眼対策】遠近両用レンズの「価格の差」は「設計の差」!あなたに最適なレンズの選び方を徹底解説

こんにちは。

岐阜県羽島市の三愛の山村です。

「安い遠近両用レンズ」と「高い遠近両用レンズ」、皆様はどちらを選びますか?

今回は、老眼世代にとって欠かせない遠近両用レンズについて、そのマニアックな設計の話と、

価格に隠された意味を解説していきます。

遠近両用レンズとは?その歴史と仕組み

遠近両用レンズとは、1枚のレンズの中に遠くを見る部分と

近くを見る部分が同時に組み込まれているレンズのことです。

かつて、おじい様やおばあ様が使用していた、遠方と近方が2つに分かれた

「二重焦点レンズ」をご存知の方もいるでしょう。

しかし、昭和40年頃に日本に入ってきた現在の遠近両用レンズは、

全く境目のないシームレスな設計になっています。

これは「累進屈折力レンズ」と呼ばれており、レンズ上部の遠方度数から下部の近方度数まで、

無段階で度数が徐々に変わっていく設計が特徴です。

これにより、二重焦点レンズでは見えなかった中間部分も見えるようになりました。

私も現在、このタイプのレンズを使用しています。

遠近両用レンズの度数の入り方

遠近両用レンズの基準となるのは、まず遠くを見る度数です。

そして、レンズの下部には老眼の度数である「加入度数」が入ります。

「加入度数(老眼度数)」は、遠くを見る度数にプラスの度数を加える形で決まります。

 人間は手元を見る際に自然と目線を下げるため、この加入度数はレンズの下の方に配置されます。

 さらに、近くを見る際には目が内側へ回旋する(輻輳:ふくそう)という特性があるため、

加入度数はレンズの下の方、なおかつ少し内側に入るように設計されています。

中間部については、パソコン画面を見る際など(中間距離)には顔を上げて中間部で見ていただき、

テレビなど家の中の離れたものを見る際には少し顔を下げる、といった形で、

ご自身で見やすい位置を探すことになります。

遠近両用レンズが抱える避けられないデメリット

遠くも近くも見える便利な遠近両用レンズですが、その構造上、

どうしても解消できないデメリットが存在します。

1. 横方向の歪みが発生する

累進設計では、レンズの横方向で歪みが出やすく、

横目使いをすると左右に歪みを感じやすくなります。

2. 老眼が進んでからのスタートは要注意

度数差が強くなってから遠近両用をかけ始めると、その歪みが強く出てしまい、

フワフワした感じや、かけづらさを強く感じる原因になります。

3. 度数が進むとグレードアップが必要になる

老眼度数(加入度数)が強くなる際、同じ設計のレンズを使い続けると、

レンズの歪みがひどくなり、使いづらさが増してしまう傾向があります。

高いレンズと安いレンズの違い

それは「設計」にありこれらのデメリットを解消し、より自然な視界を提供するために、

レンズにはグレードが存在します。遠近両用レンズの価格差は、ずばり「設計の違い」だと言えます。

レンズの度数は、レンズの外側と内側のカーブの組み合わせによって決定されますが、

累進面(度数が変化する面)をどこに配置するかによって、光学的な特性が大きく変わってきます。

設計の種類

初期/旧型

グレード:外面累進設計                                                     累進面の配置:レンズの外側
特徴:目線移動は少ないが、目から離れるため歪みを感じやすい。

現在のスタンダード

グレード:内面累進設計
累進面の配置:レンズの内側
特徴:目に近くなるため、外面に比べ歪みが抑えられる。目線移動は大きくなる傾向がある。

上級設計
グレード:両面累進設計
累進面の配置:外側と内側の両方
特徴:収差の打ち消しを行い、見える視野が広く、歪みも少ない。非常に自然な見え方になる。

両面累進設計は、外面と内面の良いところを合わせた高度な設計が必要とされるため、

当然ながらお値段も高くなりますが、その分、自然な見え方を発揮します。

究極の快適さ:個別最適設計(インディビジュアル)

最上級クラスのレンズには、「インディビジュアル(個別最適設計)」と呼ばれるものも存在します。

当店ではNIKONのZシリーズをおすすめしております。

この設計は、単に度数を合わせるだけでなく、以下の細かいパラメーターを考慮して個別で設計されます。

• お選びいただいたフレームの形状やサイズ
• そり角(上から見たレンズの傾斜)
• 傾斜角(横から見たレンズの傾斜)
• 目とレンズの距離(頂点間距離)

見え方に強くこだわる方や、複数のメガネを掛け替えても同じ自然な見え方を維持したい方には、

特におすすめの設計です。インディビジュアルはオーダーメイドに近く、

出来上がったレンズをかけて初めて、「歪みが出ない」「以前より楽だ」という自然な見え方を実感していただけます。

特に遠近の差が大きくなった方(老眼が進んだ方)には非常に有効なレンズです。

あなたが掛けるべき遠近両用レンズはこれ!3つのパターン別おすすめ

お客様の状況に応じた、最適な遠近両用レンズの選び方を3パターンでご紹介します。

1. 遠近両用レンズを初めて作る方

初めての方は度数が強くなく、歪みを感じにくいことが多いため、現在のスタンダードである内面累進設計をおすすめします。

比較的リーズナブルな価格帯で、安心して初めての遠近両用レンズをお使いいただけます。

2. すでに遠近両用レンズを使っており、グレードアップしたい方

加入度数が進むと横方向の視野が狭くなりがちです。

現在お使いのレンズよりも一つ上のグレード(例:内面設計から両面設計へ)にすることで、

視野の広さを確保することが推奨されます。

3. 究極の自然な見え方を求める方、または老眼が強く進んだ方

インディビジュアル(個別最適設計)が最もおすすめです。オーダーメイド的な設計により、

特に遠近の差が大きくなった老眼の進んだ方でも、歪みが少なく、より自然で楽な視界が得られます。

今日お話しした内容はあくまで一般論であり、最終的にはお客様のご使用環境や度数、

ライフスタイルを考慮した眼鏡店でのチェックが不可欠です。